2023-06-02

羊毛で描くモナリザのリングピロー

こんにちは。

ついに2023年も梅雨入りしてしまいました。

記録的大雨の雨音を聴きながら、今日は1年ほど前に製作した作品についてお話したいと思います。

ダヴィンチ先生とフジコの合作

今回紹介するのは、モナリザのリングピロー。

2022年の夏に製作しました。

こちらはいつも作品の販売でお世話になっているminneさんのアート企画に則ったモノづくりでした。(企画の詳細は次章で)

はがき大ほどのサイズで、ケースの厚みは5cm、重さは約500gと重厚感のある一品に仕上がっています。

普段は手刺繍を施した作品をお届けすることが多いネルネルテルネですが、この作品は「羊毛フェルト」を使って作られています。

羊毛フェルトを使ったニードルワーク、が正式な説明になるのでしょうか。

綿毛のような繊維質の羊毛、沢山の色の種類を用意し、それを少しずつ少しずつ重ねて1枚の絵画にしていく作業でした。

ニードルフェルトは今まで小さい作品で趣味の範囲で施したことはありましたが、ここまで大きな作品に仕立てたのは初めてです。

モナリザは非常に奥行きのある絵画で、その何重にも重ねられた(であろう)色の深みを手芸で表現するのには繊細な羊毛を使うのが一番だと思いました。

数色の羊毛繊維を本当に少量ずつ、耳かきで掬うぐらいちょっとずつ、重ねては専用の針で土台となるフェルト生地に刺し絡ませて紡いでいきます。

ちょっと時間がどれくらいかかったかあんまり覚えていません。

モナリザの絵画を横に並べてじっくり見ながらの作業でした。

下絵を書いても羊毛を重ねていくと見えなくなるので、自分の目と指先に頼っての再現となりました。

背景を描く前に刺し絡めた羊毛を安定させるために水通しし、干されるモナリザさん。

思った以上に固まって焦る私がヒエヒエしながら撮影しています。

表情の再現が一番難しかったです。

パキっとした輪郭があるわけではない絵画なので完璧なトレースが困難で、少しでも目や口の位置・方向が変わると表情が違う…しかも一回羊毛繊維を絡ませるとなかなか訂正しにくいのも骨の折れる作業でした。

私が最も気に入っているポイントはこちらの手!

ジョジョの吉良吉影と語り合えそうです。

輪郭があるようでない、ふっくらとしているけど柔らかな両手が上品に重ねられています。

リングピローなのでこの手の下あたりに指輪を挟める切り込みがあり、リングを入れるとまさに「モナリザの持ち物であるジュエリーです」感が出るようになっています。

実際ルーブル美術館に展示されているモナリザは防弾ガラスに納められていますが、こちらは真鍮とガラスでできたケースで仕立てられています。

是非本物の絵画のように立てて飾ってもらえたらなぁと、厚み・奥行きのあるケースにこだわったのもポイントです。

minne ART MUSEUM-世界的名画とハンドメイド

こちらはminneとイメージアーカイブ・ラボとのコラボによるのアート企画、minne ART MUSEUM-世界的名画とハンドメイドという企画が昨夏オンライン上で催され、それにエントリーした作品です。

私も、モナリザの権利を有するルーブルからモナリザをモチーフにさせていただきます、という利用許諾を購入して製作しました。

その証明書がNFTで発行され、という私も半分ぐらいしか意味が分かっていないまさにイマドキのアレで成り立っている企画です。

モナリザという作品のあまりの有名さに正直ふんわりとしていましたが、モナリザはレオナルドダヴィンチという人が描いた著作権のある作品なんだなと、改めて人間の作ったものだというのを感じた出来事でもありました。

アート作品とわたし

まずこのモナリザさんを描くにあたって、レオナルドダヴィンチのことを調べるところから始めました。

以下、作品ページからの引用なのですが、

ご存じの通り、レオナルド・ダ・ヴィンチと言えば様々な謎めいたエピソードを持つ世界的に有名な画家です。
私自身「モナリザや最後の晩餐にも色んな意味があるとか、隠されたメッセージがあるとか言われているよね」というイメージがありました。
この企画に参加するにあたり、レオナルドのことやモナリザについて調べることから始まりました。
モナリザは顔が左右で違う、モデルが誰なのか明らかになっていない、目の中にサインがある、どの角度から見ても目が合う…など様々な説を目にしました。
その不思議さにまつわる数々の謂れを読めば読むほど、歴史を感じ、夥しい数の人間がこの絵に魅了されたのだなと、厚みを感じざるを得ませんでした。
またレオナルドは複雑な幼少期を経ながらもとても博識で、その才能は絵画などの芸術作品だけでなく、設計や機械工学、音楽や科学分野でも活躍したとされています。
大聖堂の屋根の設計をしたり、王様に頼まれて絡繰り仕掛けのライオン像を作ったり、当時では珍しい地図の作成を行ったとの記録もあります。
…私は思いました。「絵ぐらい好きに描かせてやってくれ…!」と。
本当にたくさんの隠しメッセージを含ませて描いたのかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。
絵とセットで解説書が存在するわけではありませんから。
でもだからこそ、数多の人間の想像力を掻き立てることになったのですね。 解説や感想を述べる人間それぞれの性格が反映されることも、芸術作品の面白さのひとつだと勉強になりました。

ちょうどタイミング的に、漫画・チェンソーマンの作者の藤本タツキ先生が「フツーに聞いてくれ」という短編漫画を発表された時が近かったのもあったかもしれません。

エヴァンゲリオンの創生主(この言い方にエヴァオタのややこしいところが全部凝縮されてる)、庵野秀明監督の展示会を見てすぐだったこともあるかもしれません。

レオナルドのことを、モナリザのことを調べれば調べるほど「え~ほんまかいな?」「ちょっと考えすぎちゃう?」と言いたくなる自分がいると同時に、ここまで沢山の人間が興味を持ち考察し続けてきた長い歴史がたった一枚の絵画に対して存在することに畏怖の念すら感じました。

「考えすぎちゃう?」と考察を一蹴したいわけでは決してないんです。

だって考察って楽しいもんね。

この意見が正解だ!この考えこそが至高だ!!みたいな揉め事になるとややこしいですが、感想に考察を重ねてトークするのって私自身もめちゃくちゃ好きです。

それこそ人間を感じます。

私が思っているのは、庵野秀明展を見たときに感じた「この人はいろんなものを作り続けて、この人の作品に対して膨大な考察が生まれて、この人の作品に携わった夥しい人間の苦労が重なって、世の中に作品を打ち出し、経済を生み出しているけど‥本当のコアにあるのは彼が大学時代に製作した短編映像のオリジナルウルトラマンにあるように『僕もウルトラマンになりたいや!』という純粋な想いが一番強いんだろうな」ということから

レオナルドも博識でハイセンスすぎるが故に、地図やら大聖堂やら戦車やら色んなものを作って世の中に出してきたらしいけど、そんな多岐にわたりすぎる製作してるなんて‥アンタ‥無理してないか?絵は好きに描きたかったんと違う?みたいな気持ちになったということです。

これもこれで一つの考察ということで、私の考えたことは以上であります。

とにかく作品を一つ作るときに考察するのが私もめちゃくちゃ好き。

学生時代からそうでした。

テーマが決まっているファッションショーとかコンペに衣装を作る時、そのテーマのこと、テーマを出してきた側の人のこと、会場のこと、コンペ自体の目的のこと、色々考えて作品に落とし込む作業がとても好きでした。

ジョジョの作者の荒木飛呂彦先生がキャラ設定のためにキャラクターひとりずつのプロフィールシートを結構細かく作っていて‥みたいな話をどこかで見聞きし、いたく感動したことがあるのですが、私も大学生ぐらいの時のモノづくりはそれを真似てやっていたような気がします。

今回のモナリザで言うと、考察の数の多さ、それぞれの内容の重さに圧倒されるとともに、レオナルド本人の解説ではないというところを一番重要視しました。

ただただモナリザをトレースしたつもりではなくて、その謎の多さを知って作るのとそうでないのとは違うよね、という結局なんか精神論に行き着くんですけど、その重みを表現したくてこの形になりました。

モナリザの背景に何が描かれているとか、実は文字が刻まれているとか、それも全部ベールの中に封じ込めるようにハッキリした線で描くのではなく、輪郭があるようなないような繊細で緻密な雰囲気を纏うために羊毛で描くことにしたのは私的には大成功でした。

モナリザってきっと作者以外による大考察があってこその深みのある作品なんだろうな。

いつか実物を見てみたいです!

もうじき販売終了なのです

実は前述したモナリザの利用許諾証明が2023年7月で切れてしまうので、販売できるのはそこまでなんです。

minne店限定販売というルールもあるので、下記URLでのみ販売しています。

リングピローNo.057 モナリザ – ネルネルテルネ | minne 国内最大級のハンドメイド・手作り通販サイト

私は普段から「大切な指輪ほどタンスの奥に仕舞いこんでいませんか?」と見えるところに飾るのを推奨しています。

また思い出の旅行で実際にルーブル美術館に行ったことのある方は、その時の記念写真の隣に飾ってみてはいかがでしょうか。

重厚感のあるモナリザが、あなたの大切で豪華な指輪を美しく包み込みます。

関連記事